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後部座席のドアが開かずに閉じ込められた子供を救出した家族の記録
スマートキーや電子キーが普及した現代、最も多い「ドアが開かない」トラブルの原因は、キー自体の電池切れや、車両のバッテリー上がりです。外側のハンドルにあるリクエストスイッチを押しても反応せず、車内に乗り込んで内側から操作しようにもそもそも中に入れないという状況は、電子化の弊害とも言えます。それは平穏な家族旅行の途中で起きた、予期せぬアクシデントでした。サービスエリアで休憩を終え、出発しようとした時、後部座席に乗っていた五歳の息子が「ドアが開かない」と泣きそうな声で言いました。父親が運転席の集中ロックを何度も操作しましたが、カチカチという音はするものの、右後ろのドアだけが内側からも外側からも一向に開く気配がありません。外側のハンドルはスカスカと軽く、内側のレバーは重く固まったまま。窓を開けて外から手を伸ばしても、やはり状況は変わりませんでした。車内は冷房が効いていたものの、閉じ込められたという恐怖から息子はパニックになり、激しくドアを叩き始めました。家族は慌ててロードサービスに連絡しましたが、到着までには一時間以上かかるとの回答。炎天下の駐車場で、もしエンジンが止まれば命に関わる事態になりかねません。母親は必死に窓越しに息子に声をかけ、落ち着かせようと努めました。父親は取扱説明書を読み込み、内側のレバー周辺にある緊急用の小さなカバーを外し、中のワイヤーを直接操作しようと試みましたが、やはり扉は閉ざされたままでした。最終的に、到着したプロの業者が特殊な器具をドアの隙間から差し込み、内部のラッチを直接解放することで、ようやくドアが開きました。原因は、ドア内部のロック機構に小さなプラスチックの破片が挟まり、ロックとアンロックの中間位置で完全に固着してしまったことでした。内側からも外側からも操作を受け付けなくなったのは、その異物が両方のリンクをブロックしていたためです。息子は無事に救出されましたが、この出来事は家族にとって、日常の点検がいかに大切かを痛感させるものとなりました。ドア一枚が開かないというだけで、車という便利な道具が恐ろしい密室に変わってしまう。それ以来、この家族は長距離ドライブの前には必ず全てのドアの動作確認を行い、少しでも異音がすればすぐに整備を依頼するようになりました。また、万が一に備えて、車内から窓を割って脱出できる緊急用ハンマーを、運転席と後部座席の両方に備え付けるようになりました。一本のワイヤー、一つのギアの不具合が、時に大きなドラマを生んでしまう。車のドアは、私たちが思っている以上に繊細な機械の集合体なのです。