仕事で疲れ果てて深夜のコインパーキングに車を停めたときのことです。明日の朝も早いので早く帰って眠りたいという一心でエンジンを切りましたが、そこから私の長い夜が始まりました。鍵を抜こうとしても、指先に伝わるのは冷たく硬い金属の抵抗だけで、どれだけ力を込めても、左右に揺らしても、鍵はシリンダーに深く噛み込んだまま微動だにしません。車の鍵が抜けないという経験はこれまでの長い運転生活で一度もなく、最初は自分の操作ミスだと思って何度も確認しましたが、状況は変わりませんでした。周囲は街灯がまばらで人通りもなく、車を停めたまま離れるわけにもいかず、私はパニックに近い焦燥感に包まれました。 スマホのライトで足元を照らし、シフトレバーがPに入っているかを何度も確認しました。見た目には間違いなくパーキングの位置にあります。ハンドルも真っ直ぐで、特にロックがかかっている様子もありません。それなのに鍵だけが抜けないのです。もしかして内部の部品が折れてしまったのではないか、修理代にいくらかかるのだろうかといった不安が頭をよぎり、私は深夜の車内で途方に暮れました。冬の寒さが車内に忍び寄り、体温が奪われていく中で、私は必死にスマートフォンの画面を操作して解決策を検索しました。そこには、シフトレバーを何度かガチャガチャと動かしてみるというアドバイスや、ブレーキを強く踏みながら操作するという方法が書かれていました。 私は藁にもすがる思いで、一度ブレーキを思い切り踏み込み、シフトレバーをドライブからパーキングまで力強く数回往復させました。すると、パーキングに戻した瞬間に、コンソールの奥から微かにカチッという電子音が聞こえた気がしました。恐る恐る鍵に手をかけ、ゆっくりと手前に引いてみると、それまでの抵抗が嘘のように、鍵は滑らかに私の手の中へと戻ってきました。原因は、シフトレバーの内部にある接触スイッチの接触不良だったようです。長年の使用でセンサーの反応が鈍くなり、物理的にはパーキングに入っていても、システムがそれを認識できていなかったのです。鍵が抜けた瞬間のあの安堵感は、今でも鮮明に思い出すことができます。当たり前のようにできていた動作ができなくなる恐怖と、知識一つで救われる現実を、私はあの深夜の駐車場で身をもって学びました。それ以来、私は車を降りる際、必ずシフトレバーの感触を丁寧に確かめることが習慣になっています。
深夜の駐車場で車の鍵が抜けない絶望から生還した話