私は長年、大手ホームセンターのサービスカウンターで、数え切れないほどの合鍵作成の依頼を受けてきました。その中でも、お客様が最も戸惑われるのが金庫の鍵です。お客様の多くは、店頭でサッと数分で作ってもらえると思ってご来店されますが、実際にはその場で解決できるケースは全体のわずか数パーセントに過ぎません。多くの場合、私たちは申し訳ない気持ちを抱えながら、メーカー取り寄せのご案内をすることになります。この裏側にある事情を少しお話ししましょう。 ホームセンターに設置されている合鍵作成機は、主に住宅用や自転車用の鍵に最適化されています。金庫の鍵は、これらの鍵とは使われている金属の材質が異なることが多く、無理に削ろうとすると機械の刃を傷めてしまったり、鍵自体が欠けてしまったりするリスクがあります。また、金庫の鍵はコンマ数ミリの誤差も許されないほど精密に設計されており、店頭の簡易的なカットでは、鍵穴には入るけれども回らないというトラブルが多発するのです。こうしたトラブルを防ぐために、本部のマニュアルでは金庫の鍵は原則としてメーカー発注と定められている店舗がほとんどです。 受付の際、私たちが最も苦労するのが情報の確認です。金庫の型番がわからない、メーカーが不明、鍵番号が摩耗して読めないといった状況では、私たちもお手伝いができません。特に、ネットオークションで購入した中古の金庫や、譲り受けた古い金庫などは、メーカーが既に存在していなかったり、型番シールが剥がされていたりすることが多く、受付をお断りせざるを得ない心苦しい場面もあります。ホームセンターのスタッフとしてアドバイスできるのは、金庫を買ったらまず、その型番と製造番号を写真に撮っておいてほしいということです。 また、取り寄せにかかる期間についても、メーカーや時期によって大きく変動します。大型連休の前後は工場の稼働が止まるため、通常よりも一週間ほど長くかかることもあります。お客様からは急いでいるから何とかならないかと懇願されることもありますが、工場の製造工程を早めることは店舗の力では不可能です。そのため、私たちは予備の鍵がまだ一本あるうちに、早めに合鍵を作っておくことを強くお勧めしています。最後の一本を失くしてからでは、手続きは数倍大変になります。 ホームセンターのカウンターは、お客様とメーカーを繋ぐ架け橋です。私たちが詳細なヒアリングを行うのは、お客様に確実に使える鍵を届けたいという思いからです。手間がかかるように感じるかもしれませんが、その厳格なプロセスこそが、お客様の大切な金庫を守るための防犯システムの一部なのだとご理解いただければ幸いです。
店舗スタッフが教える金庫の合鍵受付の裏側