現場で日々多くの車両をメンテナンスしていると、ドアが開かないという相談は実は少なくありません。お客様が「内側からも外側からも開かない」と仰って来店される場合、私たちはまず、その原因が物理的な破損なのか、それとも電気的なエラーなのかを切り分けます。最も多いのは、やはりドアロックアクチュエーターの故障です。これは十年前後の使用で寿命を迎えることが多く、モーターが弱ってくると「ガチャッ」という音がしてもロックが完全には外れきらず、中途半端な位置で止まってしまうことがあります。こうなると、外側のハンドルを引いても内側のレバーを操作しても、ロックが邪魔をして扉は開きません。修理費用としては、部品代で一万円から二万円、工賃を含めると二万五千円から四万円程度が相場となります。また、意外と多いのが「ドア内部の異物噛み込み」です。シートベルトのバックルがドアの隙間に挟まったまま無理に閉めてしまったり、内張りの中に落ちた小物が機構に挟まったりすると、内外ともにハンドルがロックされたような状態になります。この場合、内張りを剥がして異物を取り除く作業が必要になりますが、ドアが開かない状態での内張り剥がしは非常に難易度が高く、手間がかかるため工賃も高めになります。さらに、最近の車はスマートキーと連動した電子制御が複雑で、コンピューター側のエラーでロックが解除されないこともあります。この場合は診断機を繋いでエラーコードを確認し、プログラムの再設定やユニットの交換が必要になります。整備士の視点から言えば、ドアの開閉に少しでも違和感、例えばハンドルが以前より重くなった、ロックの音が弱々しくなった、内側から開ける時に引っかかる感じがするといった予兆を感じたら、完全に開かなくなる前に点検に出してほしいと思います。内外ともに開かなくなってからでは、緊急解錠の費用がかかったり、最悪の場合は内張りを壊してアクセスしなければならなかったりと、修理の負担が大きくなるからです。車のドアは、安全を守る重要な境界線です。その動きがスムーズであることは、快適なドライブだけでなく、緊急時の脱出といった安全面においても決して軽視できないポイントなのです。これからはドアを開ける時も、あまり乱暴にガチャンと引かないように気をつけようと心に誓いました。皆さんも、ドアハンドルの手応えが少しでも軽くなったり、変な音がしたりし始めたら、私のようになる前に点検してもらった方がいいですよ。助手席から這い上がるのは、想像以上に腰に来ますから。