大切な書類や貴重品を保管している金庫が、いざという時に開かなくなってしまうほど焦る事態はありません。特に暗証番号をボタンで入力するプッシュ式、いわゆるテンキー式金庫は、その利便性の高さゆえに、ちょっとした不具合や操作ミスで沈黙してしまうことがあります。金庫が開かないというトラブルに直面した際、まず冷静になって確認すべき第一のポイントは電池の消耗です。操作パネルのランプが点灯していたり、電子音が鳴っていたりしても、内部のロックを解除するための十分な電力が残っていないケースが非常に多く見られます。多くのユーザーが陥りがちな罠は、電池切れではないと思い込んでしまうことですが、電子ロックを動かすソレノイドという部品は、一定以上の電圧がないと作動しません。電池を交換する際は、必ず新品のアルカリ電池を使用し、一部だけでなく全ての電池を同時に新調することが鉄則です。マンガン電池や充電式電池は、初期電圧が低かったり放電特性が異なったりするため、金庫の動作には不向きであることを覚えておきましょう。次に疑うべきは、暗証番号の誤入力とタイムロック機能の作動です。プッシュ式金庫は、防犯上の理由から、暗証番号を数回間違えて入力すると、一定時間操作を受け付けなくなる機能が備わっています。金庫が開かないからと焦って何度も適当な番号を打ち込み続けると、このロック時間がさらに延びてしまい、正しい番号を知っていても解錠できないという悪循環に陥ります。もし番号に自信がない場合は、一度操作を止めて三十分以上放置し、完全にリセットされた状態からやり直す心の余裕が必要です。また、ボタンの押し方にも注意が必要です。長年の使用により、特定のボタンの反応が鈍くなっていることがあります。押した時に確実にピッという音が鳴っているか、液晶パネルに数字が反映されているかを一文字ずつ確認しながら入力してください。物理的な要因も無視できません。金庫の中に物を詰め込みすぎていると、内部の荷物が扉を内側から圧迫し、ロックを解除するための閂に強い摩擦がかかることがあります。この状態では、電子的にロックが外れていても、物理的な抵抗によって扉が動きません。このような時は、扉を強く押し込みながら暗証番号を入力し、解錠の音がした瞬間にレバーを操作したり扉を引いたりすることで、摩擦が軽減されて開くことがあります。また、扉の隙間に異物や書類の端が挟まっていないかも確認してください。わずかな厚みの紙一枚が、精密なロック機構の動作を妨げていることも珍しくありません。さらに、電子基板の帯電や一時的なフリーズという可能性も考慮すべきです。最近の金庫は精密なコンピューター制御を行っているため、静電気などの影響で動作が不安定になることがあります。この場合の対処法として、一度電池を抜き、そのまま数分間放置してから再度電池を入れ直すというリセット操作が有効です。これにより、内部の電気が放電され、システムが正常な状態に戻ることがあります。それでも改善しない場合は、金庫自体の寿命や電子回路の故障を疑う必要があります。耐火金庫の耐用年数は一般的に二十年とされており、それを過ぎると電子部品の劣化が進みます。
プッシュ式金庫が開かない時に確認すべき点