玄関のドアの前で、いつものように鍵を差し込み、回そうとした瞬間。全く動かない、あるいは固くて回らない。この「鍵穴が回らない」というトラブルは、誰の身にも突然起こりうる、非常に厄介な問題です。焦る気持ちは分かりますが、こんな時こそ冷静な初期対応が、事態を悪化させずに解決するための鍵となります。まず、最初に確認すべきは、非常に単純なミスです。それは「違う鍵を差し込んでいないか」ということです。特に、自宅と実家、あるいは会社など、見た目が似ている鍵を複数持ち歩いている場合は、無意識に間違った鍵を選んでしまっている可能性があります。もう一度、キーホルダーをよく見て、正しい鍵であるかを確認しましょう。次に、鍵は正しいのに回らない場合、試してほしいのが「鍵の抜き差しと、小刻みな動き」です。鍵を数回、優しく抜き差ししてみてください。これだけで、内部のピンの僅かなズレが解消されることがあります。また、鍵を差し込んだ状態で、上下左右にほんの少しだけ動かしながら、ゆっくりと回す力を加えてみるのも有効です。長年の使用で、鍵とシリンダーの間にわずかな遊びが生じ、特定の位置でないと回りにくくなっている場合があるからです。さらに、ドア自体を少し押したり引いたりしながら、鍵を回してみるのも試す価値があります。建付けの歪みなどで、デッドボルト(かんぬき)がドア枠に強く圧迫されている(テンションがかかっている)と、鍵が回らなくなることがあります。ドアを動かすことで、この圧迫を一時的に緩めるのです。そして、ここで絶対にやってはいけないのが、潤滑油などを自己判断で鍵穴に注入すること、そして、無理やり力ずくで鍵を回そうとすることです。これらは、内部の機構を完全に破壊し、より高額な修理を招く原因となります。まずはこれらの簡単な対処法を、あくまで「優しく」試してみてください。