開かなくなった金庫の解錠を専門業者に依頼する際、私たちは一つの重要な選択を迫られることがあります。それは、金庫を傷つけずに開ける「非破壊開錠」を目指すのか、それとも、ドリルなどで穴を開ける「破壊開錠」もやむなしとするのか、という選択です。この二つの方法は、費用も、時間も、そして解錠後の金庫の運命も、全く異なります。どちらを選ぶべきか、業者と十分に相談し、納得の上で決めることが重要です。業者が、常に最優先で試みるのは「非破壊開錠」です。その理由は、この方法が、顧客にとって最も利益が大きいからです。金庫本体を一切傷つけることなく、解錠後も、これまで通り大切なものを保管する場所として、使い続けることができます。探り開錠やピッキングといった、高度な技術を駆使して、時間と手間をかけてでも非破壊にこだわるのは、プロとしての矜持と、顧客の財産を守りたいという思いの表れなのです。しかし、残念ながら、全ての金庫が非破壊で開けられるわけではありません。業者が「破壊開錠」という最終手段を提案するのは、主に以下のようなケースです。まず、経年劣化や衝撃によって、金庫内部の錠前機構が物理的に故障してしまっている場合。この場合は、たとえ正しい番号が分かっても、もはや正常に作動しないため、破壊して直接ボルトを操作するしかありません。次に、過去に素人が無理にこじ開けようとした結果、内部の防御装置(リロッキング装置)が作動してしまっている場合。この「罠」が発動すると、非破壊での解錠は絶望的となります。そして、最後に、顧客自身が、金庫の再利用を考えておらず、「とにかく中身を早く確認したい」と、スピードを最優先で望む場合です。業者に依頼する際には、「この金庫は、解錠後も使い続けたいですか?」という質問を、自分自身に問いかけてみてください。そして、その答えを業者に明確に伝えるのです。その上で、「非破壊で開けられる可能性はありますか?」「もし破壊する場合、費用はいくらになりますか?」と、両方の選択肢について、具体的な説明を求める。その対話こそが、後悔のない、最善の選択へと繋がるのです。
破壊か非破壊か?業者と相談すべきこと